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関口-池浦 広美*; 関口 哲弘; 田中 健一郎*
Physical Review B, 53(19), p.12655 - 12658, 1996/05
被引用回数:28 パーセンタイル:79.44(Materials Science, Multidisciplinary)Si(100)上に化学吸着した重水素置換したギ酸からの光刺激イオン脱離反応について結合を選択したC 1s電子励起によって研究を行った。各イオン収量は励起エネルギーに強く依存し、特定の反結合性軌道への励起によって選択された結合が切れ、それによりイオン収量が増大することを見い出した。結果は吸着系での内殻イオン脱離に対して提出された2ホール1電子反応機構の妥当性を示した。更に(C-D)/3S Rydberg混合励起状態に相当する共鳴ピークで、Dピークは(C-D)価電性励起に、CDピークはRydberg性励起に分離されることが見出された。また、INDO/CI分子軌道法による励起電子状態理論との比較を行い脱離機構を考案した。
関口 哲弘; 関口 広美*
Atomic Collision Research in Japan, 0(22), p.89 - 90, 1996/00
ギ酸メチル分子のいくつかの内殻励起状態における波動関数が各官能基や結合に局在しているという研究背景を元に、高エネルギー分解能の軟X線分光器により内殻励起状態を選択励起することにより「結合を選択した光化学反応」の可能性を検討した。実験手法としてはパルス放射光を用い、同位体置換ギ酸メチルの吸着系から脱離するイオン種を飛行時間質量分析法により観測した。各イオン収量の励起スペクトルは吸収スペクトルとかなり異なり、イオン脱離確率が初期内殻励起にかなり依存していることが見出された。特にDとCHイオン脱離確率が大きく増加した励起はC 1s(CH)(O-CH)とC 1s(C=O)(C-D)といった反結合性軌道への電子遷移による結果であると解釈された。この結果は励起エネルギーを変化させることにより分子内の反応部位(サイト)を任意に選択することができる可能性があることを示したものである。
池浦 広美*; 関口 哲弘; 田中 健一郎*
Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena, 80, p.121 - 124, 1996/00
被引用回数:4 パーセンタイル:26.09(Spectroscopy)高分解能放射光源による状態を選別した内殻励起を行い、X線吸収端微細構造領域における軟X線光化学反応を調べた。Si(100)上に化学吸着させたDCOO分子から内殻励起により脱離するイオン・フラグメント種をパルス放射光を利用した飛行時間質量分析法により検出及び同定を行うことに成功した。C 1s内殻励起によりD、CDO、O、CDなどのイオン種がかなりの信号量で観測された。更に、各イオン生成物分布の励起エネルギー依存性を測定した結果、各イオン種の脱離確率が初期励起にかなり依存することが見出された。特にD収量とCDO収量がそれぞれ(C-D)と(C-O)共鳴励起で選択的かつ顕著に増加した。この結果は空軌道の反結合性が脱離に寄与していることを示している。
関口 哲弘; 池浦 広美*; 田中 健一郎*; 小尾 欣一*
Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena, 80, p.65 - 68, 1996/00
被引用回数:4 パーセンタイル:26.09(Spectroscopy)HO/Si(100)吸着系のO 1s内殻励起光刺激脱離をパルス放射光を用いたTOF法により調べた。脱離機構を調べるために脱離HおよびOイオンの運動エネルギー分布の励起エネルギー依存性を測定した。Hイオンでは分布は近似的に3成分の和で表わされる。励起エネルギー依存性から、各成分は、それぞれ低エネルギー側から(1)Si-L殻イオン化、(2)O-K殻イオン化、(3)O 1s共鳴とO 1s、3a、シェイク・オフ過程の重なり、に相当すると考えられた。O 1s共鳴では、最高運動エネルギー成分のH脱離には(O-H)軌道の反結合性が寄与していると考えられる。Oイオンの分布は3成分解析された。第2成分はO 1s、3a、シェイクオフ過程に相当し、最高運動エネルギー成分はO 1s、2a、シェイクオフ過程に相当する。2a軌道はSi-O-H全体の強い結合性軌道である。そのため、そこにホールを空けるとSi-O結合間に大きな反発力を生じ、高い運動エネルギーのOが脱離する。
寺岡 有殿; 馬場 祐治; 佐々木 貞吉
Photon Factory Activity Report, (14), P. 422, 1996/00
高エネルギー物理学研究所放射光実験施設のBL27Aにおいて、シンクロトロン放射光を用いてオージェ電子のエネルギー分析を行った。ほぼ液体窒素温度に冷却したCu(100)の清浄表面にトランス-1,2-ジクロロエチレンの蒸気を吸着させて凝縮相を形成した。塩素の1s軌道からC-Cl結合の反結合性軌道への遷移に対応する強い吸収ピークの近傍でKLLオージェ電子のエネルギーを分析したところ、傍観型オージェ電子のエネルギーが励起エネルギーに比例してシフトするのが観測された。さらにオージェ電子スペクトルの半値幅が共鳴ピーク位置で狭くなることも観測された。このナローイングは傍観型オージェ過程が最終的な2正孔状態の寿命に支配されることを示している。すなわち、傍観型オージェ過程はオージェ共通ラマン散乱であることが明らかになった。
関口 広美*; 関口 哲弘; 田中 健一郎*
Photon Factory Activity Report, (13), P. 207, 1995/00
内殻励起によるギ酸多分子層吸着系から光刺激イオン脱離反応を調べた。脱離イオン種の検出・同定はパルス放射光を利用した飛行時間質量分析法により行った。KEK-PFのBL11Aからの単色軟X線を光源とし、種々の脱離イオン収量のC-K吸収端における励起エネルギー依存性を測定した。また、C-KVVオージェ電子収量測定を行い、光吸収断面種曲線を得、それらを比較した。その結果、Dのみが(C-D)共鳴励起で顕著に増加することがわかった。吸収ピーク極大はイオン種のそれより1.7eV高エネルギー側に位置する。イオン脱離が表面感度が高いこと、イオンピーク極大が単分子層のイオン及び吸収ピーク、気相吸収のピーク全てに一致していることから、この結果は最表面分子が孤立分子的であり、それがイオン脱離に観測されたためと結論した。この結果はまた、(C-D)軌道が強反結合性であることも要因の一つであると考えられる。